リサイクル法とは
日本では高度成長期(1955年~1973年頃)からバブル期(1980年後半〜1991年)にかけて、生産活動の一段の拡大と消費増大が進み、廃棄物の排出量が一気に増えていきました。また、大型の家電製品など適正な処理が難しい廃棄物の出現やペットボトルの普及など、廃棄物の種類も多様化していきました。
こうした中、顕著になってきたのが、最終処分場の不足とひっ迫でした。国では、それまで廃棄物の適正処理の進展に注力してきましたが、それでは抜本的解決は図れないと判断し、施策のポイントを変えます。廃棄物の排出量そのものの抑制にシフトさせたのです。
1991年、それまでの「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」が大きく改正され、廃棄物の排出抑制と分別・再資源化が、法律の目的に加わりました。
廃棄物総排出量の推移
リサイクル法はいつスタートした?
さらに同年、「資源の有効な利用の促進に関する法律」が制定されます。これがリサイクル法です。
廃棄物を極力減らし、リサイクルを促進することで資源の有効活用を図るという狙いです。具体的には、各製品の設計・製造段階においての環境への配慮、事業者による自主回収・リサイクルシステムの構築のためなどの規定が定められています。
このリサイクルをより一層推進していくために、その後、「容器包装リサイクル法」(1995年)を皮切りに、さまざまなリサイクル法が制定されていきます。
また2000年には、大量生産・大量消費・大量廃棄型といった20世紀型の経済システムから脱却し、3R(発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle))の実施と廃棄物の適正処分が確保される循環型社会の形成を推進するために、「循環型社会形成推進基本法」(循環基本法)を制定しました。
こうして日本は、大量消費社会を脱し、循環型社会の構築に本格的に乗り出していくことになったのです。
①容器包装リサイクル法(1995年制定)
- 対象物
- スチール缶、アルミ缶、ガラスびん
- 段ボール、紙パック、紙製容器包装
- ペットボトル、プラスチック製容器包装
リサイクル方法の種類、対象、一覧
各家庭で、ごみとなって排出される、商品の容器や包装に使われた廃棄物をリサイクルする目的で定められたのが「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)です。
大きな特徴は、廃棄物の処理は、消費者(分別してごみを出す)、市町村(分別してごみを集める)、事業者(ごみを再商品化する)の三者の役割分担を決め、三者が一体となって容器包装廃棄物の削減に取り組むことを義務づけたことです。
容器包装リサイクル法の実施により、容器包装の分別排出・分別収集・リサイクルは社会に定着しました。例えば、ペットボトルのリサイクル率は82・6%、スチール缶は92・0%となっています。
リサイクルの取組概要
②家電リサイクル法(1998年制定)
- 対象物
- 家庭用エアコン、テレビ
- 電気冷蔵庫・電気冷凍庫
- 電気洗濯機・衣類乾燥機
テレビ、エアコン、冷蔵庫といった家電製品は、この法律が制定される以前は、粗大ごみとして扱われていましたが、大型で重いため、適正な処理が難しく、約半分は埋め立てられていました。
このことは、廃棄物最終処分場の残余容量がひっ迫している日本にとっては、大きな懸案事項でした。また廃家電製品には、鉄、アルミ、ガラスなどの有用な資源が多く含まれているのにも関わらず、破棄してしまっている現状も問題視されていました。
こうした背景のもと、廃棄物の減量とリサイクルが必要ということで、家電製品の製造業者等と小売業者に、新たに義務を課すことを基本とする新しい再商品化の仕組みを定めた「特定家庭用機器再商品化法」(家電リサイクル法)が制定されました。
家電リサイクル法は、家電4品目について、小売業者による消費者からの引取り・製造業者等への引き渡し、製造業者等によるリサイクルを義務付け、一方、消費者には廃棄する際、収集運搬料金とリサイクル料金を支払うことなど、それぞれの役割分担として定めています。
家電4品目
廃家電4品目の引取台数
家電リサイクル法の対象家電の回収方法とは?
エアコンやテレビなど家電リサイクル法の対象となる家電は、勝手には処分できません。ルールに従って回収してもらう必要があります。「新しい製品への買い替え」と「処分のみ」によって、回収方法は変わってきます。
また、処分のためにはリサイクル料金を支払う必要がありますが、家電の種類、メーカー、大きさなどによって料金が異なります。
再商品化等料金一覧(家電リサイクル料金)https://www.rkc.aeha.or.jp/recycle_price_compact.html
- 買い替えの場合
- 新しい製品を購入するショップに回収を依頼します。ショップごとに引き取り方法は違います。
- 家電量販店の場合https://www.yodobashi.com/ec/support/beginner/setup/recycle/index.html
- 処分のみの場合
- 「その製品を購入したショップ」「各自治体の案内する方法」「郵便局振込方式で料金を支払い、指定引き取り場所に持ち込む方法」の3つのやり方があります。
③食品リサイクル法(2000年制定)
- 対象物
- 食品廃棄物等
日本では、本来食べられるのに捨てられてしまう食品である「食品ロス」の量は、年間522万トン(令和2年)にもなっています。そこで、食品産業に対して食品循環資源の再生利用を促進するため「食品リサイクル法」が定められました。
食品ロス量の推移(平成24~令和2年度)
令和2年度食品ロス量は522万トン、うち事業系は275万トン。
いずれも、食品ロス量の推計を開始した平成24年度以降、最少値
具体的には、食品廃棄物そのものの発生を抑制すること、再資源化できるものは飼料や肥料などへの再生利用を行うこと、再生利用が難しい場合は熱回収を行うことなどが盛り込まれています。
食品廃棄物等の発生量及び再生利用等の内訳(2020年度推計)
2020年の食品産業全体における食品廃棄物の発生量は16,236千トンであり、前年度である2019年に比べて7.5%減少しました。業種別に見ると、食品製造業は13,389千トン(前年度比5.9%減)、食品卸売業は231千トン(同6.2%減)、食品小売業は1,110千トン(同6.4%減)、そして外食産業は1,506千トン(同20.8%減)でした。
一方、食品産業全体における食品循環資源の再生利用等実施率は86%であり、業種別に見ると、食品製造業は96%、食品卸売業は68%、食品小売業は56%、そして外食産業は31%でした。
なお、食品リサイクル法に基づく食品循環資源の再生利用等実施率の目標は、2024年度までに食品製造業で95%、食品卸売業で75%、食品小売業で60%、そして外食産業で50%に向上させることが計画されています。
食品廃棄物等の発生量の内訳及び再生利用等実施率
2020年度推計値
食品リサイクル法で規定している食品循環資源の再生利用の用途別の内訳
2020年度推計値
④建設リサイクル法(2000年制定)
- 対象物
- 特定建設資材
- コンクリート
- コンクリートと鉄から成る建設資材
- 木材
- アスファルト・コンクリート
建設工事では、コンクリートや木材など、さまざまな廃棄物が出ます。全産業廃棄物のうち、約2割を占めており、不法投棄については全体の約8割を占めるほどでした。
資源の有効な利用を確保する観点から、これらの廃棄物について再資源化を行い、再び利用していくため、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)が定められました。
特定建設資材(コンクリート塊、アスファルト・コンクリート、木材など)を用いた一定規模以上の建設工事(新築、増築、改修、解体工事)を行う際には、その受注者は、建設リサイクル法に基づいて、資材ごとの分別解体、そしてリサイクルの取り組みを行うことを義務付けています。
- 対象となる工事
- 床面積80㎡以上の建築物解体工事
- 床面積500㎡以上の建築物新築・増築工事
- 請負代金1億円以上の建築物修繕・模様替え等の工事
- 請負代金500万円以上の建築物以外の解体・新築工事
リサイクル法届出について
建設リサイクル法の対象となる工事を行う際は、受注者側は、しっかりとした手続きを踏む必要があります。
- 説明
- 元請け業者は発注者に対し、分別解体などの計画について書面を交付して説明します。
- 契約
- 発注者が元請業者と交わす契約書面に、分別解体などの方法を明記しなければいけません。
- 事前届出
- 発注者は、工事に着手する7日前までに、分別解体などの計画について、都道府県に届出を行います。
- 告知
- 元請業者は、他の建設業者に下請けさせる場合には、下請業者に都道府県への届出事項を告知します。
- 契約
- 元請業者が下請業者とかわす契約書面の中に、分別解体等の方法などを明記する必要があります。
- 分別解体等・リサイクル等の実施
- 報告
- 元請業者は分別解体やリサイクルなどが完了したときは、発注者に対し書面でその旨を報告するとともに、リサイクル等の実施状況に関する記録を作成し、保存します。
⑤自動車リサイクル法(2002年制定)
- 対象物
- 自動車(四輪)
日本では、年間で約315万台(令和2年)(*注釈)もの自動車が廃車されています。
* 産業技術省公開資料 – 自動車リサイクル法の施行状況より抜粋
このうち、約80%がリサイクルされ、残りの20%がシュレッダーダスト(クルマの解体・破砕後に残るプラスチックくずなど)として、これまで主に埋立処分されてきました。
その一方で、廃車の不法投棄や不適正処理の懸案、あるいはカーエアコンのフロン類やエアバッグ類の処理の難しさも露呈していました。このような状況を踏まえ、定められたのが「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(自動車リサイクル法)です。
自動車リサイクル法では、自動車内で処理が困難な三品目(シュレッダーダスト、フロン類、エアバッグ類)は自動車メーカーが引き取り、リサイクル(フロン類は破壊)することを定めました。使用済自動車の処理費用は、リサイクル料金として、自動車の所有者が負担することになっています。
⑥小型家電リサイクル法(2012年制定)
- 対象物
- パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、時計、ドライヤーなど
スマートフォンやパソコンなどの小型家電には、鉄、アルミ、銅、貴金属、レアメタルといった価値のある金属が多く含まれています。
政府広報オンラインによると、現在、日本で廃棄される小型家電は年間約60~65万トンで、その中に含まれている有用な金属などをすべて回収&リサイクルすると、金額にして約844億円分にも上るといわれています。この使用済み小型家電は、都市にある鉱山という意味で「都市鉱山」といわれているのです。
こうした有用な金属をリサイクルするために定められたのが「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」(小型家電リサイクル法)です。