プラスチック新法 (プラ新法)
プラスチックごみの現状とは?
一般社団法人プラスチック資源利用協会の調査によると、日本のプラスチックごみ排出量は824万トン(2021年)となっています。このうち約40%が使い捨てプラスチック容器です。
また、プラスチックごみの有効利用率は87%ですが、このうちの約71%が焼却して熱を回収するサーマルリサイクルです。原料として再利用(マテリアルリサイクル)しているわけではないのです。
マテリアルリサイクルしている割合は約24%で、このうち約74%は海外に輸出されています。一方で中国などでは、プラスチック廃棄物の輸入規制が強化されてきている事実もあります。
プラスチックくずの輸出量
海洋に漂うプラスチックごみの問題もあります。環境庁の調べでは、海洋ゴミの半分以上がプラスチックごみであり、年間2~6万トンが日本からの流出だと推計されています。この状態が続けば、2050年の海は、魚よりもごみの方が多くなると言われているのです。
日本での漂着ごみ調査結果
プラスチック新法とは?
こうした状況下、日本では、いかにプラスチックの使用を減らしていくか、さらには、いかに国内で資源循環を図っていくかが大きな課題になっています。
こうしたなか、2022年4月1日に施行されたのが「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック新法)です。目指すのは「3R+Renewable」です。
3Rは、Reduce(リデュース/発生抑制)、Reuse(リユース/再利用)、Recycle(リサイクル/再資源化)の3つのRの総称です。
これまでの3Rの考え方に加え、Renewable(リニューアブル/再生可能資源の活用)の考え方を加えたのが、プラスチック新法というわけです。
なぜ3Rだけではないのでしょうか。
3Rの考え方だけでは、石油などの天然資源の使用や廃棄物の発生を抑えることは難しく、プラスチック問題の抜本的な解決にはつながらない――そこで、Renewableを加えたのです。
最初からリサイクル不可能なプラスチック使用製品を製造せず、限られた天然資源をできる限り長いスパンで使用し、その後はリサイクルによって再び資源として利用するというのが、プラスチック新法の目的なのです。
これまでのリサイクル法と、何が違う?
日本には「容器包装リサイクル法」「家電リサイクル法」など、さまざまなリサイクル法があります。これらのリサイクル法の特徴は、製品に焦点を当てているという点です。すでに存在する製品の破棄後、どのように再利用するかという問題に目を向けています。
プラスチック新法では、製品ではなく、プラスチックという素材に焦点を当てています。プラスチックを使用した製品の設計・製造から廃棄物の処理までのライフサイクル全体で資源循環を促すことを目指しています。
その実現に向け、3つの段階ごとに、次のようなアプローチが提言されています。
①製品の設計・製造段階
プラスチックの資源循環を実現させるには、設計段階での取り組みが不可欠になります。構造や材料などの配慮が大切です。
プラスチック使用製品製造事業者等が取り組むべき事項及び配慮すべき事項
②製品の販売・提供段階
フォークやスプーンなど12種類が特定プラスチック使用製品に指定され、削減することが求められます。対象となる業種は、各種小売業、飲食店、宿泊業、洗濯業などです。
対象製品
対象業種
- 各種商品小売業(無店舗のものを含む):総合
スーパー、百貨店等 - 飲食料品小売業(野菜・果実小売業、食肉小売
業、鮮魚小売業及び酒小売業を除き、無店舗のもの
を含む):コンビニ、食料品スーパー、洋菓子店等 - 宿泊業:ホテル、旅館等
- 飲食店:レストラン、喫茶店等
- 持ち帰り・配達飲食サービス業:フードデリバリー等
対象製品
対象業種
宿泊業:ホテル、旅館 等
対象製品
対象業種
- 各種商品小売業(無店舗のものを含む):総合
スーパー、百貨店等 - 洗濯業:クリーニング店等
出典: プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」 について
③排出・回収・リサイクル
市区町村による分別収集・再商品化、製造・販売事業者などによる自主回収・再資源化、排出事業者による排出の抑制・再資源化を図っていきます。
プラスチック新法に違反したときの罰則について
主務大臣が必要と認めた場合、特定プラスチック使用製品の提供事業者、およびプラスチック排出事業者には、指導・助言が入ります。
また、前年度の提供量が5トン以上の特定プラスチック使用製品多量提供事業者、および前年度の排出量が計250トン以上の多量排出事業者には、勧告・公表・命令措置が下ることもあります。命令にも違反すると、50万円以下の罰金が処せられます。
プラスチックを使用する消費者に求められること
プラスチック新法の内容は、事業者や自治体に課せられるものが多いのですが、消費者の協力がなければ、資源循環型の社会は作ることはできません。
環境庁では消費者に向け、ぜひ普段の暮らしの中で「プラスチックは、えらんで、減らして、リサイクル」に積極的に協力してほしいと訴えています。
- えらんで
- 「包装の簡素化」「長期使用化・長寿命化」といった構造面や「プラスチック以外の素材への代替」「生プラスチックの利用」といった材料など、エコなプラスチック製品を選びましょう。
- 減らして
- 使い捨てプラスチックを減らすには、消費者一人ひとりが日々の生活のなかで、プラスチック製品は必要な分だけ使用する、繰り返し使用できる製品を活用するといった、プラスチックを過剰に使わないようにする心がけが大切になります。
- リサイクル
- 家庭から出るプラスチックごみについては、自治体の分別ルールに従って、分別・回収・リサイクルを徹底します。自分たちにできる「3R+Renewable」をいつも意識していきます。